教育者の中でも、一番大変だと言われるのが教師の仕事。
今、高校の非常勤講師として、副業キャリアを築いている女性がいます。
お名前はいそべみほさんで、「ゼロ塾ガイド」の監修者を担当しています。
そんなみほさんに今回は、教師としての思いや、これまでの経歴やエピソードについてお伺いしました。現在のいそべみほさんが形成された経緯や、ご自身が目指す教育者としての形なども率直にお話くださっています。
以下では私のプロフィールも掲載しています。
知ることは、生徒にとって武器になる
ーまずは「教師」を始めた理由を教えてください。
私が今勤めているのは私立の高校なんですが、塾のバイトを大学生で3年間やったっていうのが大きくて。人生の転換期って言っても過言じゃないぐらいで。人前に立って大きな声を出して、喋るような仕事をするイメージはあんまりなかったんですけど。
大学生でありながら、塾の先生として仕事をするっていうことに対して、責任感を持って仕事をすること自体も楽しい。
そう思い、このメディアを訪れた人には、教師としてのキャリアを活かし、一次情報を使った情報を伝えていくこと。そう思いながら、教師として監修者の仕事をしています。
ーなるほど。ひとくちに教育の仕事といっても、塾の講師や家庭教師など、教師のほかにもできる仕事はたくさんあります。教師になったきっかけはありますか?
今までの人生の中で、私の記憶によく残っている先生っていうのは何人かいらっしゃって。小学校2年生の時の担任の先生は、卒業したての新卒の女の若い先生だったんですね。その先生に年賀状を出したんですね。
そしたら、帰ってきた年賀状に「みほさんの笑顔がすごく好きです」って書いてくださってて。ちょっとびっくりして、私、自分の笑ってる顔がすごい嫌いだったんで。
すごくショックというか、びっくりしたというか、こんなことを初めて言われたと思って。
なんか素直に笑えてないのがわかってたんだなと思って。そんなに表に出してるとは思わなかったけど、あんな若い先生がそれを見てたのが、びっくりしたし、嬉しかったです。
小学校3年生で担任が変わってしまったんですけど、ベテランのおじいちゃん先生でした。私、そんなにひょうきんなタイプでは全然なかったんですけど、通知表に先生のコメントが書いてありまして。
「最近ちゃめっ気が見られてきました」っていう文章があったんですよ。そう見られてるんだと思って。楽しくなりたいな、面白い子になりたいなと思ってたけど、なれてない自分がいたんですけど、外から見たらちょっとはそう見えてるらしくて、すごい嬉しくて。
そこまでちゃんと見てくれる先生で、人って変われるなっていうか。やっぱ認めてもらえたっていうのが大きいと思うんです。そういう先生、かっこいいなと思いました。
ー勉強の仕方だけでなく、色々な視点で物事を教えてくれる先生って魅力的ですよね。では、そもそも「憧れ」から教師としてのキャリアを築いたのでしょうか。
私が高校生の時に妹の友達がテスト前に何人かうちに集まって勉強していたときに、分からないところを教えてあげてたんです。妹の友達に「すごい!わかった!ありがとう!」って言われたのはやっぱり嬉しくて。
教えるのが楽しいみたいな、感覚を覚えてまして。わからないものって嫌じゃないですか。モヤモヤしてるのを、なんとか自分の言葉を紡ぐことで、わかったって言ってもらえるのがすごく嬉しいっていうのが、 根本的にやっぱりあります。
40人のクラスで1人でもいいからわかったって言ってくれたら、もうすごく嬉しい。わかったとか面白いとかって言ってもらえるのが1番の目標です。
元気いっぱいの幼少期から、大人しい中学生時代
ー先ほど、みほさん自身は子どもの頃は元気いっぱいの幼少期で、勉強には興味がなかったとおっしゃいました。どんなお子さんでしたか?
子供の頃を今から思い起こすと、大きく2つの時期があると思っていて。記憶があるかないかわからないぐらい小さな時代は、人前で人からの注目を浴びるのが好きな時期があったりとか。
リーダーシップをとるみたいなのが自然だった。長女というのもあると思うんですけど。3歳ぐらいの時の話です。同じマンションの同級生と1つ下の友達が家に来てて、おもちゃを家中に広げて遊んでた時に、ふと気づくと母の姿が見えなかったんです。
少しの間、席を外していただけだったんですが、なぜか短絡的に「近鉄に行った」って思った私は、友達2人を引き連れて、全員で手一杯におもちゃを抱えて近鉄まで行くんです。
その当時、近鉄までっていうのが、子供で30分近くかかるんですけど、しかも踏み切りも渡っていってるんですよね。
上の階から地下までひと回りして、母を見つけられず、そのまままた帰宅するんですけど。その頃には小さな子どもが3人行方不明ということでマンション中で、警察を呼ぶか呼ばないかの大騒ぎになっていて。なかなかの行動力だなと思います。そんな時期があって小学校の途中ぐらいまでは、元気に過ごしてたんです。
ーでは、中学生ではどんなお子さんでしたか?
中学校入ってから、 なんか目立つことを怖がり出して、急に中学の時って、勉強できたらいじめられるっていうか。何勉強してんの、みたいな。先生にええとこばっかり見せてみたいな。カッコつけてみたいな。そういう時代が、中学生時代にはありました。
そこからはもう急に学校に行くこともあんまり楽しくない。行きますけど、母が怖いので。もう休み時間もずっと本読んでたりとか、とにかく目立たないようにしてたりとかっていう、 そのまま中高まできましたね。成長して、大学で急に変わるっていう感じです。
大学時代に塾長に憧れ、教育の楽しさを知る
ーでは、みほさんが「教育の楽しさ」に気づいた話を聞かせてください。どんなきっかけでそう思われたのですか?
「教える事の楽しさ」に気づいたのは高校生の頃です。妹のお友達がうちに来て、試験勉強をしていたときに、数学を教えてあげることがあったんです。ゆっくり丁寧に教えてあげると「すごい!わかった~!!」と言われ、とても嬉しさを覚えました。
3人姉妹の長女なので、妹たちに教える事は自然と普段からしていたのですが、家族以外の人に教えて、喜んでもらえたことが、発見になりました。そんなこともきっかけになって、大学入学後、新聞広告に載っていた塾講師のアルバイトに応募しました。
履歴書を投函した後、その封筒に切手を貼り付けたかどうか記憶が定かでなかったので、電話をかけて、面接前に塾長とお話しさせてもらいました。その後、正式に面接に伺ったのですが、その際に「先日の問い合わせ電話の時に採用を決めましたよ」と言われました。
大学生になりたての未熟な私でも、きちんと等身大の自分でお話をすれば認めていただけたということが嬉しかったです。
またそう話してくださる塾長のことを尊敬しました。
そこから3年間、学校に行く時間以外はほとんど塾で過ごしました。小学生・中学生の集団指導の中で、集団を相手にしつつも、1人1人にきちんと向き合うことを初め、苦労しながらもやりがいをとても感じ、教える事の虜になりました。
ーそれはすごいですね。大学院時代についてもう少し教えてください。
私が通っていたのは女子大だったんですが。人生1回だから、なんでもできることはとにかく欲張ってやってみたいと考えていたんですね。
なので近隣の他大学のお友達をたくさん作ったりしていました。その方々とお話している中で、私の研究室では洗って、滅菌して、使いまわしている実験器具が、よそでは使い捨てのところもあると聞いて、そんな世界を見てみたいっていうか、行ってみたい気持ちがありました。
あとは、大学は自宅から通ってたんで1人暮らしがしたいっていう冒険心が出てきたのもありました。家からギリギリ通えない距離の、帰ってこれるけどギリギリ通えないぐらいの距離で、規模の大きな学校に、行けるものなら行きたいと希望が湧きおこりました。
それで他大学の大学院を受けることにしたんです。ちょうど就職もかなり厳しい時代だったので、4回生で就職探しても知れているというか。
大学院卒っていうのが、就職にもプラスになるのかなっていうのもあったんですけど、バイトで教員を経験してて、教員もとにかく楽しいけれども、もしかすると私は研究者とかも向いてるかもしれない。
それが本当に向いてるかどうか確かめてみたいというのもありました。1つの職業に絞るのは、 まだもったいないという気持ちもありました。
大学院は、私の当時の学力では厳しいようなところに、いろんな偶然が重なって結果的に入れました。その経験から、チャレンジすることの大切さを知りました。傍から見たら、無謀だって思えるようなことでも、
チャレンジしてみたら上手くいくこともあるっていう。 すごい発見でしたね。
教師として「理解する楽しさ」を伝えるのが仕事
ー最後に、塾選びをしておられる、このメディアの読者の方々に向けてメッセージをお願いします。
勉強はしんどいものとか、勉強は嫌なものっていうイメージがあると思います。面白くないものを聞かされてるって思うと、やっぱり耳に入ってこないですよね。でも、面白いこと言うかもと思って、聞いてもらったりとか、こう読んで読むとか、 色々あると思うんです。
何かしらが飛び込んでくると思って心の扉と、脳みその扉を開きながら前に進んでいく。ちょっとでも前に進んでいくと、身につくものがたくさん出てくるんじゃないかなっていう風に思っています。
勉強はしんどいものとか、嫌だけど我慢しなきゃいけないもの、というイメージがあると思います。面白くないものを聞かされてるって思うと耳に入ってこないですよね。この先入観があるとほんとに何も前に進めないんですよね。
2人の子供の親でもあり、教員でもある私が普段気を付けてることがあります。
自分が昔に感じていた勉強への負の感情を、子どもに刷り込まないことです。
負の感情をを少しだけコントロールしてゼロ状態で、少しだけ前のめりになって授業を聞いてみると、一日1つだけでも新しくて面白い発見があるかもしれない。小さな発見をきっかけにして、勉強を全くしてこなかったけど看護師さんになられたお友達もいます。
「脳の扉を開いてみて!」
(取材・文/渡辺なおや)